探究の進め方 手順とテンプレ
探究の問いを狭める5つの軸
BRIEF この記事が扱うこと
この記事はテーマを決めた後の工程を扱います。テーマの探し方や例の一覧は扱いません。「食品ロスについて調べる」から先へ進めないときに、問いを調べられる大きさまで狭める作業です。
| 記事の型 | 手順とテンプレ |
|---|---|
| 配布素材 | 探究の問い 絞り込みワークシート |
| 参照した資料 | 1件(記事末に一覧) |
探究が止まる場所は、テーマの前ではなくテーマの後にもあります。「食品ロス」「地域の交通」までは決まったのに、何を調べればよいかが決まらない状態です。
原因は、問いが大きすぎることが多くあります。この記事では、大きい問いを調べられる大きさまで狭める手順を5ステップで進めます。最後に穴埋めのワークシートを配布します。
探究の工程のうち、テーマ決定の次にあたる「問いを立てる」を扱います。テーマそのものが決まっていない場合は、この手順の前に興味の棚卸しが要ります。
5ステップの全体像
作業は5つです。ステップ3までで問いの形になり、ステップ4と5で精度を上げます。
- いまの問いを3つ書き出す
- 5つの軸で狭める
- 調べられる形に直す
- AIに壁打ちさせる
- 自分の言葉で確定する
途中で止めて翌日に続けても進みます。ステップ2を飛ばしてステップ4から始めると、AIの出した候補をそのまま採用する形になりやすくなります。後から自分の言葉に戻すのが難しくなります。
ステップ1: いまの問いを3つ書き出す
思いついた順に3つ書きます。良し悪しは判断しません。この段階の目的は、頭の中にある問いを外に出すことだけです。
例(テーマが「食品ロス」の場合):
- 食品ロスはどうすれば減るだろうか
- 食品ロスはなぜ起きるのだろうか
- コンビニの食品ロスはどうなっているのだろうか
3つとも大きい問いです。この段階では大きいままで進めます。次のステップで狭めます。
ステップ2: 5つの軸で狭める
3つのうち、いちばん気になるものを1つ選びます。その問いに対して、次の5つの軸を当てます。
| 軸 | 当てる質問 | 記入例 |
|---|---|---|
| 対象 | 誰の、何のことを調べるか | スーパーの惣菜売り場 |
| 場所 | どこの話に限るか | 自分が住んでいる市 |
| 時間 | いつの話に限るか | 直近3年 |
| 条件 | どんな条件のときに限るか | 閉店2時間前以降 |
| 比較 | 何と何を比べるか | 平日と休日 |
5つすべてを埋める必要はありません。2つ以上埋まれば次に進めます。埋まらない軸は空欄のままにします。
軸を当てると、問いは次のように変わります。
- 変える前: 食品ロスはどうすれば減るだろうか
- 変えた後: 自分の市のスーパーの惣菜売り場では、閉店前の値引きが平日と休日でどう違うだろうか
調べる先が見える形になりました。
ステップ3: 調べられる形に直す
狭めた問いを1文で書き直し、次の3つに答えます。
- この問いに答えるには、どんな情報が必要ですか
- その情報はどこにありますか(統計・文献・アンケート・観察・インタビューのどれか)
- 自分が使える時間の中で、その情報は集まりますか
3つ目が「いいえ」になる場合、問いがまだ大きいか、手段が決まっていません。ステップ2に戻って軸をもう1つ足します。
ステップ4: AIに壁打ちさせる
ここでAIを使います。使い方は候補と質問を出させることで、問いそのものを決めさせることではありません。3本のプロンプトを、この順に使います。
プロンプト1: 軸の候補を出させる
高校の探究学習で、次のテーマの問いを立てようとしています。 テーマ: 〔テーマを書く〕 いまの問い: 〔ステップ1で選んだ問いを書く〕 この問いを狭めるための候補を、次の5つの軸ごとに3案ずつ出してください。 軸: 対象 / 場所 / 時間 / 条件 / 比較 条件: - 完成した問いの文は書かないでください。軸ごとの候補だけを出してください。 - 高校生が自力で情報を集められる範囲の候補にしてください。 - 各候補には、その情報がどこにありそうかを1行で添えてください。
問いの完成文を書かせない指示を入れているのは、次のステップで自分が書くためです。
プロンプト2: 調べる手段を確認させる
次の問いに答えるために必要な情報を整理してください。 問い: 〔ステップ3で書き直した問いを書く〕 出してほしいもの: 1. 必要な情報の一覧(多くても5つ) 2. それぞれの入手方法(統計 / 文献 / アンケート / 観察 / インタビュー のどれか) 3. 入手が難しそうなものと、その理由 条件: - 実際の統計名や機関名を挙げる場合は、その名称と、公表している組織名を書いてください。 - 確実でないものは「未確認」と書いてください。推測で名称を作らないでください。
出てきた統計名や機関名は、そのまま信じずに検索して実在を確かめます。名称が実在しない場合があります。
プロンプト3: 問いを検査させる
次の問いを、探究の問いとして検査してください。 問い: 〔問いを書く〕 検査する観点: 1. 調べる対象・場所・時間のうち、いくつが指定されているか 2. 「はい / いいえ」だけで終わってしまわないか 3. 答えが調べる前から決まっていないか 4. 高校生が集められる情報で答えられるか 出力の形式: - 観点ごとに「満たしている / 満たしていない」と、その理由を1行 - 書き直し案は出さないでください。指摘だけにしてください。
書き直し案を出させないのは、次のステップを自分で書くためです。
ステップ5: 自分の言葉で確定する
AIの出力から採用するものを選び、問いを自分で書き直します。このとき、採用しなかった候補も理由つきで残します。後で発表の質疑に答えるときの材料になります。
確定した問いを、次の3点で点検します。3つとも当てはまるまで書き直します。
- 調べる対象・場所・時間のうち、2つ以上が書かれている
- 「はい / いいえ」だけで終わらず、調べた結果で答えが変わりうる
- 情報の入手先を1つ以上、具体名で言える
記録を残す
AIを使ったときは、使ったAIの名称・入力した指示・日付を控えておきます。
文部科学省のガイドライン Ver.2.0(令和6年12月26日)p.20に、次の記述があります。生成AIを用いた際に「生成AIツールの名称、入力したプロンプトや出力、日付等を明記させることが考えられる」というものです。
同p.18にも関連する記述があります。教科書等の質の担保された教材を用いる前に安易に利用することが、不適切と考えられる例として挙げられています。
AIを使ってよいか、使った場合に何を書くかは、学校や課題によって異なります。担当の先生の指示を先に確認してください。この記事の手順は、指示の範囲内で使うことを前提にしています。
配布素材: 穴埋めワークシート
ステップ0から5までをそのまま記入できるシートです。印刷しても、入力欄に貼り付けても使えます。
探究の問い 絞り込みワークシート
tankyu-toi-worksheet.mdMarkdown5ステップ・記入欄20
AIとのやりとりを記録する欄も入れています。
関連する記事
- 文部科学省の生成AIガイドラインを家庭の言葉で読む — 学校の方針の根拠になっている資料を、原典のページ番号つきで整理しています
LIMITS この手順で解けないこと
- テーマそのものの探し方は扱いません。テーマが決まっていない場合は、この手順の前に興味の棚卸しが要ります。
- 提出物でAIを使ってよいかは、学校や課題によって異なります。この手順は、担当の先生の指示の範囲内で使うことを前提にしています。
- AIが挙げた統計名や機関名が実在するかは、この手順では確かめられません。名称は自分で検索して確認してください。
できることだけを並べても判断は早くなりません。扱えない範囲を先に出しています。
参照した資料
資料 文部科学省「初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン Ver.2.0」 (令和6年12月26日・p.18 Box-5、p.20 Box-6 を参照)